オーステナイト系ステンレス(SUS316等)の耐食性維持したまま、

表面硬化処理を実現した弊社独自技術「パイオナイト」

更新日:2022/12/5

投稿者:西野

こんにちは

エア・ウォーターNV㈱です。

ステンレスの耐食性と表面硬化の両立は、

今まで難しいとされていました。

しかしながら、

エア・ウォーターNV㈱の独自技術「パイオナイト」は、

オーステナイト系ステンレス(SUS316など)の耐食性を維持しつつ

金属表面を硬化させる画期的な技術です。

今回のブログではステンレスの特長から、

パイオナイトの原理と特長までお話します。

ステンレス

ステンレスとは

ステンレスの主成分(50%以上)は鉄(Fe)です。

その鉄にクロム(Cr)を添加していくと、徐々に錆びにくくなり、

10.5%以上のクロムを添加し、非常に錆にくくなったものをステンレスと言います。

ステンレスは耐食性以外にも耐熱性・加工性・強度など優れた特性を備えています。

ステンレスは英語で「Stainless Steel」と言い、“さびにくい鋼”という意味です。

ステンレスはなぜ錆びにくい

ステンレスが錆びにくい理由は、クロムの働きによるものです。

鉄と酸素が結びつく前に添加したクロムが、酸素と結合して金属表面に薄い不働態皮膜を生成します。

この不働態皮膜が、被膜内の鉄の酸化を防ぎます。

また、この被膜は非常に緻密で安定しており、一度壊れたとしても周りに酸素があれば、

自動的に再生する機能を持っています。

ステンレスと錆

ステンレスが錆びにくい理由は不働態皮膜が金属表面を覆い、錆の進行を防ぐことですが、

ステンレスも錆びることがあります。

ステンレスが錆びる理由の一つとして、があります。

使用する環境や、熱処理などにより高温で維持されることで、金属表面を覆うだけのクロムが欠落します。

クロムが欠落することで、耐食性が低下し、錆の原因となります。

その為、ステンレスの耐食性の維持と金属表面を硬化の両立は難しいとされていました。

パイオナイト

原理

パイオナイトはガス活性化処理と低温炭素固溶拡散処理を組み合わせた処理です。

この処理は500℃以下の温度領域で、オーステナイト組織中に炭素を固溶拡散し、

炭素が結晶の隙間に完全に入り込むことで、硬く錆びない表面処理です。

パイオナイトはガス活性と低温ガス浸炭処理を組み合わせた処理
パイオナイトの原理

特長

 

① オーステナイト系ステンレスの耐食性と表面硬化を両立させます。

 → クロム炭化物を生成させずに基材に炭素を固溶拡散させることにより、ステンレスの耐食性を落とさずに表面硬化(母材比3~4倍)させるます。

SUS316にパイオナイト処理後の断面組織写真と断面硬度分布図
SUS316にパイオナイト処理後の断面組織写真と断面硬度分布図

② 寸法精度の維持が容易です。

→ 処理層は膨張量が少なく、低温処理のため熱処理歪の発生も抑制されることから、処理前後の寸法変化量が小さい処理です。

③ しなやかな硬化層を形成させます。

→ 固溶拡散層は処理後の変形にも追従し、処理後の塑性加工も可能です。

パイオナイト処理品と窒化処理品の曲げ試験。パイオナイト処理品の方がしなやかさがある。
パイオナイト処理品の曲げ試験

④ 非磁性を維持します。

→ 処理を行っても磁性が発生しません。(窒化処理では必ず磁性が発生します。) 

ステンレスの未処理品・パイオナイト品・窒化品それぞれの表面の最大磁束密度の比較
各表面最大磁束密度の比較

おわりに

パイオナイトは

現在、自動車関係、食品機械、医療機器、生活関連用品等様々な分野に

活かされています。

少しでもご興味がございましたら、

お気軽にお問い合わせくださいませ。

エア・ウォーターNV㈱では皆様にお役に立てる情報を今後も発信していきます。

引き続きよろしくお願い申し上げます。

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